第46章 清美が雲さんに家を買った

「使っちゃった」

「使っちゃった?」林富岡は理解できなかった。

「ええ、文字通りよ」夏川清美は時間を計算し、赤ちゃんがそろそろ目覚める頃だと思い、目の前の人とこれ以上話している暇はないと、だるそうに答えた。

林お父さんが林夏美がお金があるからこそこんな変化があったと思っているなら、彼女が正体がばれることを心配する必要もないわけだ。

林富岡は自分の娘の性格をよく知っていた。たとえ雲さんに離間されても、自分が強い態度を取れば、必ず譲歩するはずだった。カードを手に入れて鈴木末子の穴埋めをする準備はできていたが、まさか事態が完全に予想外の展開になるとは。

「お前...」林富岡は言葉に詰まり、夏川清美の投げやりな態度を見て、大いに腹を立てた。

「お父様、他に用がないなら、私は子供の世話をしに上がらないといけないわ。ご存知の通り、結城家から相当な月給をいただいているので、しっかり仕事をしないと」夏川清美は林富岡の真っ赤な顔を無視して、誠実そうに言った。

林富岡は拳を握りしめ、「待て、三億円を使ったと言うが、どうやって使ったんだ!」

「お父様はいつから娘が自分で稼いだお金の使い道まで管理するようになったの?林家はそんなに困っているの?」夏川清美は心配そうな表情で林富岡を見つめて尋ねた。

「林夏美!」

「私のこの程度のお金を欲しがるより、どうやって明里を安全に結城家に嫁がせるか考えた方がいいわ。そうすれば何もかも手に入るでしょう。今、小娘が結城家のベビーシッターとして稼いだわずかな給料を取り立てに来るよりずっとましよ」ここまで言って、夏川清美は突然じっと林富岡を見つめ、「ここは結城家よ。私たちの会話が外に漏れて笑い者になることを心配しないの?」

そうよ、富康製薬の社長が自分の娘が稼いだ給料を取り立てに来るなんて。

どこに伝わっても笑い話になるわ。

特に林家は将来結城家と縁組みするというのに。

林夏美の言葉を聞いて、林富岡の表情はさらに険しくなった。思わず周りを見回したが、先ほどの会話が本当に誰にも聞かれていないか確信が持てず、少し狼狽えた様子で夏川清美を見つめ、「お前...本当にいい娘を持ったものだ」