結城陽祐は行動派だった。
午後、藤堂さんと山田さんを外に行かせ、赤ちゃんの部屋へ向かった。
トントン、トントン!
抑制の利いたリズミカルなノックの音が響き、夏川清美はそれが結城陽祐だと察し、ドアを開けながら救急箱を用意していた。
結城陽祐が入ってくるなり、彼女は急かした。「久美がもうすぐ目覚めそうだから、早く脱いで」
子供の様子を見るつもりだった結城陽祐は「……そんなに急いでるの?」
「ちょっとね」前回、この男に首筋に温かい息を吹きかけられて以来、彼女の脳裏には時々「僕が欲しいものは何でもあげる?」という言葉が浮かび、そのたびに首がムズムズした。
そのムズムズが彼女を苦しめた。
夏川清美はこれまでこんな経験をしたことがなかったが、直感的に良くないことだと感じ、目の前の男との距離を保とうとした。