第64章 私は邪魔をしてしまったのかな?

槙島秀夫はゆっくりと夏川清美の手の太い縄を解いていた。

この太った女がどれだけ意地を張るつもりか、たかが知れている。結城家で産後ヘルパーをしただけで身分が高くなったと思っているのか?

笑わせる。

それに槙島秀夫は自信満々だった。この太った女が昔、彼にどれほど夢中だったか、よく知っているのだから。

今では彼が少し優しくするだけで、思いのままに操れるはずだ。

監視カメラの方をちらりと見て、得意げに口角を上げ、「さっきは何も飲まなかったな。少し付き合って飲もうか?雰囲気も出るだろう?」

「いいわよ」夏川清美はベッドサイドのトレイに置かれた開封済みのワインを見て、無邪気に笑った。

槙島秀夫はさらに得意げになった。太った女を強制するより、自ら差し出してくる方が好みだし、より説得力もある。話している間に太い縄が解かれ、「よし」

パン!

槙島秀夫のその言葉と共に、思い切り平手打ちが彼の顔に炸裂した。

槙島秀夫は呆然とした。

彼の頬は肉眼で見えるほどの速さで赤く腫れ上がり、怒りに満ちて、もう取り繕わずに「この淫売め、俺を殴るとは?死にたいのか!」

そう言って夏川清美の髪を掴もうとしたが、伸ばした手がしびれ、そして全身がしびれていくのを感じ、力が入らなかった。

槙島秀夫は口をパクパクさせ、「俺に何をした?」

パン!

夏川清美はまだ気が済まないようで、もう一発槙島秀夫を平手打ちした。

「この淫売め、殺してやる!」だが叫び終わった槙島秀夫は、夏川清美に飛びかかる前に、がくんと床に倒れ込んだ。

夏川清美は先ほど解かれた縄を取り出し、槙島秀夫の髪を掴んで椅子の方へ引きずっていき、彼の両手を後ろ手に椅子の脚に縛り付け、きつく結び目を作った。そして立ち上がってベッドサイドのワインを手に取り、匂いを嗅いでから、槙島秀夫の口を無理やり開けて流し込んだ。

槙島秀夫は必死にもがき、怒りと屈辱で目が血走っていた。

自分が見下していた、しかし自分に夢中で尊厳も捨てて這いつくばっていた醜い化け物が、百キロも太ってから、こんな仕打ちができるとは思いもしなかった。

屈辱と怒りで、槙島秀夫は狂ったようにもがき、ワインは至る所に飛び散り、場面は混乱を極めていた。

「本当に大人しくしないわね」夏川清美は呟きながら、手近にあったワインボトルを手に取り、そのまま振り下ろした。