翌朝。
夏川清美は木村久美の世話を済ませ、階段を降りると結城お爺さんの隣に結城陽祐の姿を見かけた。
太極拳を練習するため、結城お爺さんは生成りの綿製中山服を着ており、とても元気そうに見えた。そして、彼の隣にいる結城陽祐も同じ服装をしていた。
普通なら年寄りっぽく見える中山服だが、結城陽祐が着ると、より一層その気品のある姿が際立っていた。その美しい顔立ちは、ピンクのバラの傍に立つと、まるで謫仙が人間界に降り立ったかのようだった。
夏川清美は目の前の男性を形容する言葉を長い間考えたが、最後には「綺麗」という二文字しか思い浮かばなかった。
綺麗以外の何物でもなかった。
「清美ちゃん、急いで始めましょう。久美ちゃんが起きたら時間がなくなってしまいますから」結城お爺さんは夏川清美が孫を見てぼーっとしているのを見て、慣れていないのかと思い、急かした。
夏川清美はようやく我に返り、「はい」と答えた。彼女は結城陽祐のような御曹司が一緒に太極拳を練習するとは思っていなかった。
先ほどの自分の失態を恥ずかしく思い、結城陽祐の冗談めかした視線を避けながら、練習を始めた。
この太極拳は幼い頃から練習してきたもので、既にその真髄を掴んでいた。動き出すと、彼女の雰囲気は一変した。
結城陽祐はお爺さんに強引に連れてこられ、太極拳がそれほど凄いとは思っていなかった。お爺さんの最近の変化は朝晩の運動と前向きな心持ちのおかげだと考えていたが、夏川清美が動き出した瞬間、周りの空気の流れが変わったように感じた。
普段は波風の立たない琥珀色の瞳が突然夏川清美に釘付けになり、少し驚いた様子で、先ほどの一瞬が自分の錯覚だったのかを確かめようとした。しかし、夏川清美のその後の一つ一つの動作が周囲の気の流れを導き、お爺さんの印象さえも変えていった。
一瞬の戸惑いの後、結城陽祐の表情は真剣になり、二人のリズムに合わせて練習を始めた。
お爺さんは太極拳が好きで、結城陽祐は幼い頃から強制的に一緒に練習させられていたが、この古い内家拳に特別なものを感じることはなかった。
しかし今日、夏川清美の動きに合わせることで、太極拳に隠された秘密を発見したかのように感じ、全身の気配が変わっていった。