タンパク質不耐症のため、木村久美はずっと母乳を飲んでいた。
しかし結城陽祐は万が一に備えて、早くから木村久美のために特別な粉ミルクを用意していたが、これまで使う機会がなかった。
ただし夏川清美は、ばれないように意図的に一缶開けて、時々赤ちゃんに与えていたが、ほとんどの場合は自分の母乳を与えていた。
幸い、他のメイドたちは手伝いに来るものの、ほとんどの時間は各自の仕事をしていたため、夏川清美は深く安堵すると同時に、一人で赤ちゃんの世話をすることの大変さを実感した。
藤堂さんが不在の三日間で、彼女は2キロ痩せた。
予想外の収穫だった。
しかし三日後、藤堂さんは結城邸に戻ったものの、母乳が出なくなっていた。おそらく怖がっていたせいだろう。
以前のような明るさもなくなり、仕事をする際にも慎重になり、庭での噂話も夏川清美にこっそり話すことはなくなった。
夏川清美はそれを見て、結城陽祐に対する反感がさらに強まった。
あの日病院から戻って以来、夏川清美と結城陽祐の直接的な接触は、必然的にも意図的にも減っていった。
むしろ結城陽祐の方が、数回の出会いで彼女を見る目が複雑になっていた。
夏川清美は、相手が木村久美を危険な状況に置いたことを根に持っており、結城陽祐の眼差しにどんな深い意味があるのかを気にしていなかった。
ただし、彼女が時々二階で太極拳の練習をしているのを結城お爺さんに見られ、興味を持たれた。
年配の方々が最も推奨する武術は太極拳で、動きが派手ではなく、健康増進にも良い。
「君の動きはとても正確だね」お爺さんは数日間見た後、ついに口を開いた。
夏川清美は笑って取り繕った。「適当に練習しているだけです」
彼女の祖父は比叡山で修行し、太極拳に非常に高い造詣を持っていた。伝説の古人のように神業的ではないものの、ボクシングの達人を何人か倒すことは朝飯前だった。
太極拳は内家拳で、十三式がある。
聞こえは簡単だが、実際には悟性に対する要求が非常に高く、一生かけて学んでも三分の理解も得られない人もいる。そのため、太極拳には「学ぶ者は牛毛の如く多く、成就する者は明けの明星の如く少なし」という言い伝えがある。
夏川清美はちょうど悟性の高い部類に属し、静を以て動を制するのが最も得意だった。
以前バーで手を出したときも、太極拳を使用していた。