「いやいや……」
夏川清美が自分の悪い感情に浸って抜け出せないでいる時、ベッドの木村久美が突然目を開けた。
小さな子は最初誰も見えなかったようで、大きな目をあちこち見回し、最後にいやいやと声を上げ始め、小さな頭も右に左に振り向いて、ようやく夏川清美を見つけると、突然笑顔を見せた。
夏川清美は少し驚き、呆然と小さな子の笑顔を見つめていた。
この頃、彼女は時々木村久美の笑顔を見ることがあったが、ほとんどは寝ている時の無意識の笑みで、先ほどのように小さな子が彼女を見つけて嬉しそうに笑うのとは違っていた。
二月の海水に沈んでいた心が、突然暖かい陽を浴びたかのように、少しずつ溶けていった。
彼女が最も絶望的な時に、この世で最も純粋な笑顔を見たのだ。
不純物もなく、利害関係もなく、美醜や太り細りとも無関係で、彼は全身全霊で彼女を頼り、必要としていた。
潮のように押し寄せてきた無力感と絶望感は、潮のように一緒に引いていった。
夏川清美は前に出て木村久美の小さな鼻をつついた。「赤ちゃん、もう一度ママに笑って。」
これは夏川清美が初めて自分をママと呼んだ時で、彼女が想像していたほど難しくはなかった。
ベッドの小さな子は夏川清美の言葉を理解したのかどうかわからないが、また口を開いて笑い、大人には永遠に理解できない赤ちゃん言葉でいやいやと話し続け、それを楽しんでいた。
夏川清美は心の重荷を下ろし、目の前の小さな子と夢中で遊び続け、木村久美が再び眠りについた。
部屋は元の静けさを取り戻したが、夏川清美の気持ちは既に全く違っていた。自分の体の贅肉を見て、心の中で計画を立て、立ち上がって鏡の前で自分に言い聞かせた。「夏川清美、諦めたら負けよ。」
諦めてはいけない!加藤迅の何気ない一瞥で自分を打ち負かすわけにはいかない。
漢方医学を諦めて外科に進み、心臓外科界で最も輝かしい天才女医になるまで、途中で何かのことで諦めていたら、彼女は以前の夏川清美にはなれなかっただろう。
今は単に試練の形が変わっただけなのに、どうして打ちのめされることができようか?
絶対にダメ!
しかも今の彼女は、最高の自分になるだけでなく、目の前の子供の面倒も見なければならない。
傲慢は怖くない、怖いのは卑屈さだ。