「いやいや……」
夏川清美が自分の悪い感情に浸って抜け出せないでいる時、ベッドの木村久美が突然目を開けた。
小さな子は最初誰も見えなかったようで、大きな目をあちこち見回し、最後にいやいやと声を上げ始め、小さな頭も右に左に振り向いて、ようやく夏川清美を見つけると、突然笑顔を見せた。
夏川清美は少し驚き、呆然と小さな子の笑顔を見つめていた。
この頃、彼女は時々木村久美の笑顔を見ることがあったが、ほとんどは寝ている時の無意識の笑みで、先ほどのように小さな子が彼女を見つけて嬉しそうに笑うのとは違っていた。
二月の海水に沈んでいた心が、突然暖かい陽を浴びたかのように、少しずつ溶けていった。
彼女が最も絶望的な時に、この世で最も純粋な笑顔を見たのだ。
不純物もなく、利害関係もなく、美醜や太り細りとも無関係で、彼は全身全霊で彼女を頼り、必要としていた。