上階。
結城陽祐はソファに寄りかかりながら、健二の方を見て「ウェディングドレス選び?」と尋ねた。
「はい、槙島様が三着のウェディングドレスを持ってきて、清美さんに選んでもらうようです」健二は正直に報告した。前回のDNA鑑定以来、陽祐さんが清美さんにより一層注目するようになったと感じていたが、証拠はなく、陽祐さんも鑑定結果を教えてくれなかった。
「あの体型で何を選ぶというんだ?」結城陽祐は軽く嘲笑した。
健二は驚いて自分の上司を見つめた。「それは...太めの女性にも幸せになる権利はあります」
陽祐さんは紳士で、人の陰口を最も嫌う人なのに、今日は清美さんの体型を批判している。健二はこれは品位に欠けると感じた。
しかし健二が言い終わると、結城陽祐は真剣な表情で彼を見つめ「槙島秀夫があのぽっちゃりくんを幸せにできると思うか?」と尋ねた。
健二は意味もなく質問されて戸惑ったが、あの日の槙島秀夫の行動と、噂で聞いた話を思い出し、首を振った。「清美さんには、誠実で優しく、生活力のある男性の方が合っています。槙島様は良い相手とは言えません」
「誠実で優しく、生活力がある?」結城陽祐は健二のこの言葉を吟味するように繰り返し、突然顔を上げた。「お前のことを言っているのか?」
「私が誠実で優しく生活力がある?陽祐さんのお褒めの言葉ありがとうございます。ですが、恋愛は個人的なことですから、清美さんが本当に槙島様を好きなら、他人には何もできません」健二は自分が上司からそれほど高く評価されていることに喜びを感じた。
結城陽祐は健二を横目で見て「褒めたつもりはないが?」
それに、このバカはどうしてぽっちゃりくんが槙島秀夫のような人でなしを好きだと思ったんだ?
健二は一瞬固まった。褒められてなかった?
「彼女はお前のようなタイプは好きにならない」健二がまだ呆然としている中、陽祐さんのこの言葉を聞いて、さらに混乱した。誰が自分のようなタイプを好きにならないというのか?自分のどこがいけないというのか?
しかし結城陽祐はすでに立ち上がっていた!
「陽祐さん、これは...」
「ぽっちゃりくんのウェディングドレス選びを見に行く」結城陽祐はそう言い残し、悠々と階段を降りていった。あのぽっちゃりくんがどれほどその人でなしを好きなのか、見てやろうじゃないか。