結城邸。
婚約の日が近づいてきたが、林家に比べて結城家の方がずっと淡々としていた。
結城陽祐は毎日朝晩、夏川清美とお爺さんと太極拳の練習をする以外は、ほとんど姿を見せなかった。
結婚式の準備にも関心を示さず、すべて結城家の執事に任せきりだった。
林夏美は何度か結城陽祐にウェディングドレスの相談をしようとしたが、結城陽祐はいつも健二に断らせていた。
その代わり、夏川清美は忙しかった。
結城陽祐の無関心さとは対照的に、槙島秀夫は時々夏川清美に連絡を取り、婚約の件について話し合おうとした。特に結城邸に来たいと言い出し、夏川清美に何度か断られた後も諦めず、今日はついにウェディングドレスを持って押しかけてきた。
まるで以前の不和など無かったかのような態度だった。
夏川清美は階段を降りて、スーツ姿で結城お爺さんの前で恭しく控えめな様子の若者を見て、この人が以前どのように人を使ってホテルに彼女を連れて行かせたのか、また槙島家で激怒して彼女を殺すと言い張っていたことを、ほとんど忘れそうになった。
「清美や、お前も23日に婚約するのか。早く言ってくれれば良かったのに。爺さんが休みを与えてやるよ」結城お爺さんは夏川清美と太極拳の練習をしてから、体調も精神も良くなり、夏川清美にとても親しみを持っていた。しかし夏川清美も23日に婚約すると初めて聞いて、驚いた後で思いやりを込めて言った。
夏川清美は本当の衣冠禽獣を一瞥して、微笑みながら答えた。「家族の手配で、少し急ですが、今は木村久美が私なしでは駄目なので、婚約当日に休暇を取れば十分です」
「そうか、そうか。それなら槙島君に迷惑をかけることになるな」夏川清美のおかげで、お爺さんの槙島秀夫に対する態度も丁寧になった。ただ心の中では、陽祐と林お嬢様の婚約でさえ急だと思っていたのに、清美と槙島家の婚約はさらに急で、同じ日を選んだことに疑問を感じ、思わず夏川清美のお腹を見てしまった。
お爺さんは頑固な人ではなく、おそらく夏川清美が妊娠したから両家がこんなに急いでいるのだろうと考えた。
「ご迷惑なんてとんでもありません。当然のことです」槙島秀夫は穏やかな態度で、それを言う時の視線は夏川清美に向けられ、意図的な深い愛情を込めていた。
結城お爺さんはそれを見て手を振った。「じゃあ、若い二人で話し合いなさい」