結城邸。
婚約の日が近づいてきたが、林家に比べて結城家の方がずっと淡々としていた。
結城陽祐は毎日朝晩、夏川清美とお爺さんと太極拳の練習をする以外は、ほとんど姿を見せなかった。
結婚式の準備にも関心を示さず、すべて結城家の執事に任せきりだった。
林夏美は何度か結城陽祐にウェディングドレスの相談をしようとしたが、結城陽祐はいつも健二に断らせていた。
その代わり、夏川清美は忙しかった。
結城陽祐の無関心さとは対照的に、槙島秀夫は時々夏川清美に連絡を取り、婚約の件について話し合おうとした。特に結城邸に来たいと言い出し、夏川清美に何度か断られた後も諦めず、今日はついにウェディングドレスを持って押しかけてきた。
まるで以前の不和など無かったかのような態度だった。
夏川清美は階段を降りて、スーツ姿で結城お爺さんの前で恭しく控えめな様子の若者を見て、この人が以前どのように人を使ってホテルに彼女を連れて行かせたのか、また槙島家で激怒して彼女を殺すと言い張っていたことを、ほとんど忘れそうになった。