第93章 林夏美に出世の機会を与えない

鈴木末子は眉をひそめ、看護師がなぜ夏川清美の名前を出したのか分からなかった。

「お母さん、聞いてきて」林明里は林夏美が一番嫌いで、突然看護師の口から彼女の名前を聞いて、気分が悪くなった。

「分かったわ、すぐに聞いてくるわ」鈴木末子も不思議に思い、返事をして看護師に聞きに行った。

外には多くの人が集まっており、少しうるさかった。

鈴木末子は手近な看護師を捕まえて尋ねた。「何を話しているの?随分と賑やかね」

若い看護師は鈴木末子を認識し、これが林家の奥様で、お手入れは行き届いているものの性格のよくない人だと知っていたので、我慢強く説明した。「明後日に病院で3年に一度の医術コンテストが開催されるので、みんな参加する医師について話し合っているんです」

「医術コンテスト?」鈴木末子は最近病院に入院していて、少しは聞いていたが、先ほどの人々が出した名前が気になって尋ねた。「さっき夏川清美という名前を聞いたんだけど」

「ああ、夏川先生のことですね。私たちの病院の天才医師でしたが、手術台で急死されてしまったんです」若い看護師は夏川清美の名前を聞いて、少し残念そうな表情を浮かべた。

鈴木末子は安堵した。同じ名前の別人だったのだ。「そう、それは残念ね」

心の中では、あのデブ野郎と同じ名前の人間がろくなものであるはずがない、死んで当然だと思っていた。

「本当にそうなんです。夏川先生は特に優秀で、縫合術は海外でも有名で、加藤院長でも及ばないほどでした。本当に天は人の才を妬むものですね」若い看護師は夏川清美のことを話すうちに、目の前の鈴木末子が良くない人物だということを忘れてしまっていた。

しかし彼女の言葉が終わると、別の女性看護師が口を挟んだ。「聞いた?今回の医術コンテストに京都医科大学の1年生で、やはり夏川清美という名前の人が参加するらしいわ。でも林という姓みたい。夏川先生と同じ名前だけど、医術はどうなのかしら?」

鈴木末子は一瞬固まった。看護師の言葉を心の中で反芻した。夏川清美という名前で、姓が林なら、それは林夏美ではないか?

そして林夏美は確かに京都医科大学の1年生だった。