第106章 このデブはバカなんじゃないか

夏川清美は林夏美の病室を出ると、表情がかなり明るくなった。

彼女にもあの患者たちを扱う方法はあったが、病室に入った時からカメラで生中継されていたため、問題が起きやすかった。

槙島秀夫が自分で自分の顔を打つようなものだから、彼女としては願ってもないことだった。

先ほどの槙島秀夫と林夏美が彼女の自撮り写真を見た時の表情を思い出すと、夏川清美の美しい瞳に思わず笑みが浮かんだ。

そのとき、スタッフが慌てて近づいてきた。「すみません、林さんですか?」

「はい、そうです」夏川清美は相手を一瞥した。誠愛病院の看護師で、IDカードを付けており、今回のコンテストの案内係の看護師だった。

「すぐに来てください。加藤院長が巡回中にあなたの状況を知って、すぐに15号室の患者のところへ連れて行くように言われました」看護師は焦っており、額に汗が滲んでいた。明らかに走ってきたようだった。

夏川清美は加藤迅が自分のことを気にかけているとは思わなかった。以前の冷たい態度で落ち込んでいた心が、突然少し癒された気がして、看護師に笑顔を向けて言った。「案内をお願いします」

「はい、こちらです」看護師はそう言うと、夏川清美を最奥のエレベーターへと案内した。「今日は病院が混んでいるので、VIPエレベーターの方が空いています」

そう言いながら、看護師はカードを通して夏川清美とエレベーターに乗り込んだ。彼らがいたのは20階で、看護師は1階のボタンを押した。

夏川清美は加藤迅のことを考えていて深く考えなかったが、乗ってしばらくすると突然めまいを感じ始めた。最初はエレベーター内が蒸し暑く、自分が太っているせいだと思ったが、すぐにおかしいと気付き、急に顔を上げた。「あなた、誰なの?」

「看護師ですよ。林さん、大丈夫ですか?」その看護師は目を見開いて、困惑したような表情で夏川清美を見つめた。

しかし夏川清美には相手の顔がぼやけ始めていた。急に相手に向かって拳を振り上げたが、看護師は素早く身をかわし、夏川清美に得意げな笑みを向けた。

もはやさっきの純朴で焦っていた看護師の面影はなかった。

夏川清美は頭がくらくらする中、相手が得意げに笑っているその時、突然一本の針を投げつけた。