加藤迅のせいで、夏川清美は道中ずっと心ここにあらずで、病院に入ってから誰かに見られていることにまったく気付いていなかった。
加藤迅の話を聞いた後、彼女は参加番号と対応する手術室を受け取った。
誠愛病院は近年心臓外科が非常に有名で、今回の医術大会では心臓外科に応募した医師が最も多かった。
多くの若手医師は、順位を獲得できなくても、老教授の指導を受けたいという思いで参加していた。夏川清美は京都医科大学の一年生に過ぎず、その外見も相まって、結城家の推薦状を持っていても目立たなかった。
受け取った番号も後ろの方だった。
今回の大会では多くのボランティアが募集され、その多くは医療費を支払えない貧しい患者たちで、手術過程は全て生中継され、術後のケアも最後まで責任を持って行われる。