第112章 林夏美、必ず手ずから殺してやる

結城陽祐は心の中で苦笑いした。

加藤迅に大きな賭けをしたのに、結局ぽっちゃりくんに頼ることになるとは。

以前から彼の体の状態は複雑だったのに、今は開胸手術後こんなに放置され、先ほどの物音を聞いて手術台から這い降りた。麻酔で痛みは感じないものの、命が少しずつ失われていくのを感じていた。

今もそうだ。

ぽっちゃりくんが可哀想だ。必死に助けようとしてくれたのに、結局は無駄な努力に終わってしまう。

結城陽祐は心残りで、祖父たちがぽっちゃりくんを責めるのではないかと心配だった。必死に目を開けようとしたが、ぼんやりとした太った影しか見えず、何か言いたくても声が出なかった。

夏川清美は結城陽祐の思いを感じ取ったのか、かすれた声で命令した。「動かないで、喋らないで。私はあなたを死なせない。でも、ただで助けるつもりもない」

結城陽祐はぼんやりと聞こえた言葉に、心の中で笑みを浮かべた。このぽっちゃりくんは、こんな時でも自信満々だ。梁静茹から勇気をもらったのだろうか。

それまでの悔しさが急に消えた。このぽっちゃりくんは、自分が思っていた以上に強いのかもしれない。林富岡一家も彼女をいじめることはできないだろう。

「木村久美を頼む」最後の意識を振り絞って、結城陽祐はそう口の形を作った。

しかし夏川清美は全く気付かなかった。結城陽祐は苦笑い、まだ何か言いたかったが、手術時間が長くなるにつれて意識が薄れていき、ついに完全に意識を失った。

結城陽祐の完全な意識喪失は夏川清美に何の影響も与えず、彼女は依然として整然と縫合を続けた。

さらに一時間後、ようやく心臓の縫合糸を結び、余分な糸を切り取り、夏川清美はため息をついた。

しかしまだ終わりではない。

血流が正常であることを確認した後、胸を閉じる必要がある。

特殊なワイヤーで切断された胸骨を固定し、再び皮膚を縫合する。

しかし先ほどの心臓の縫合に比べれば、皮膚の縫合はずっと簡単だった。

それでも夏川清美は少しも油断せず、一針一針の大きさを全く同じにして、両手を休めることなく皮膚を縫い合わせていった。

最後の一針まで。

健二は夏川清美というあの意地悪なデブに刺し殺されたと思っていたが、目を開けると自分はまだ研究室にいた。