けたたましいサイレンの音が、耳をつんざくように響き渡った。
出口で争っていた二組の男たちは、一瞬驚いて立ち止まった。
金髪が一番早く反応した。「やばい親分、警察が来たぞ、逃げろ!」
リーダーはまだ諦めきれない様子だった。さすがに一億円だ。しかし、サイレンの音が近づいてくる。最後に考え直し、命が大事だと判断して、仲間たちに向かって叫んだ。「撤退!」
そう言うと、大男は鈴木濱との争いを止め、他の三人と共に後退した。
しばらくすると、出口には車椅子を押す夏川清美と健二、そして鈴木濱の二人だけが残った。
四人の暴力団員が金のために動いていたのに対し、彼らの任務は結城財閥の未来の後継者に関わる重要なものだった。数千億円規模の財産が絡んでおり、失敗すれば取り返しのつかない事態となる。
鈴木濱は先ほどの怒りの衝動から我に返り、夏川清美と健二を毒蛇のような冷たい目で見つめ、いつでも攻撃できる態勢を取った。先ほどの四人の馬鹿とは違い、外のサイレンが警察車両ではなく救急車だということを十分理解していた。
ここは誠愛病院だ。救急車が一台来ても何も不思議ではない。すぐに立ち去るかもしれない。
夏川清美は相手の目に込められた意図を読み取った。「あそこに監視カメラがありますよ。あなたの上司は手術失敗による自然死に見せかけるために、彼を研究所に三、四時間も放置したんでしょう?殺人に見えないようにね。でも今ここで手を下したら、上司の努力も水の泡ですよ」
鈴木濱は立ち止まり、監視カメラの方をちらりと見た。突然冷笑を浮かべた。「たかが監視カメラ一つで何になる?警察の手に渡るかどうかも分からないのに」
「そうですか?監視カメラは改ざんも削除もできるでしょう。でも死因は?今の彼の状態は、開胸後に胸腔を無理やり閉じただけで、手術は完了していません。死ぬのは時間の問題です。上司の思い通りになるまで待てばいいじゃないですか。でも今すぐ結果を出したいなら、少なくとも三人を始末しなければならない。警察をなめすぎじゃないですか?」
夏川清美は言い終わると、ふくよかな顔に軽蔑的な笑みを浮かべた。
結城陽祐の死が事故死として片付けられても、そばにいたボディーガードや家政婦、従業員まで一緒に死んでいたら、簡単には済まないだろう。