「林さんでいらっしゃいますか?」
「はい、そうです。この二人が患者です」健二のこの鉄の男の変わりやすい感情を夏川清美が理解する前に、中央市民病院の医療スタッフが到着していた。
夏川清美が答えると、担当医は担架の上の二人を見て、これほど重症なのになぜ直接誠愛病院に入院しないのかと不思議に思った。
「誠愛病院では医術大会を開催中で、医師が見つからなくて。急いで救急処置をお願いします」医療スタッフの心中を察したかのように、夏川清美は催促した。
スタッフたちはもう余計な話をせず、結城陽祐と岡田光秀を素早く救急車に運び、二人に酸素を投与した。
夏川清美は健二と一緒に救急車に乗り込んだ。
酸素を投与された結城陽祐の呼吸は明らかに楽になったものの、まだ顔色は死人のように蒼白かった。
健二は俯いたまま、一言も発しなかった。
夏川清美は三時間にわたる手術を跪いて行い、さらに先ほどの二組の人々と知恵を尽くして戦った。産後百日も経っていない体は痛みで堪らなかったが、救急車は狭く、彼女は体格が大きいため、しゃがんだ姿勢を強いられ、窮屈でたまらなかった。
太り過ぎは確かによくない。
車内で、救急医はすぐに結城陽祐が開胸手術を受けていることに気付き、二人を信じられない目で見た。「この手術は誰が行ったんですか?いつ行ったんですか?今転院させるなんて命知らずですよ?」
「この方は結城グループの次男で、先ほど誠愛病院で主治医の加藤院長が人質に取られ、誠愛病院全体が安全でなくなったため、市立病院の救急車を呼びました。どうか彼らを助けてください」既に乗車していた夏川清美は、もう嘘をつく必要はないと考えた。警察がすぐにこの件を調査するだろうと確信していた。
車内の二人の救急医は顔を見合わせた。こんな大きな問題に巻き込まれるとは思っていなかった。彼らは先ほど救急要請を受けた時、深く考えず、ただ誠愛病院が医術大会を開催中で患者を受け入れていないのだと思っていたが、まさかこんな厄介な事態に遭遇するとは。
そして今、彼らは何を聞いたのか。加藤院長が人質に取られた?
これは何という衝撃的なニュースだ!
「さすが加藤院長ですね、この縫合が実に美しい」二人の医師は悩んだ末、結城陽祐の縫合箇所を見て思わず感嘆の声を上げた。さすは心臓外科のエースだ。