夏川清美は老人をちらりと見て、健二の視線を無視し、身をかがめて結城陽祐を押して外に向かった。
健二は信じられない様子で彼女を見つめ、最後には歯を食いしばって、背の高い体を折り曲げ、夏川清美のように病床を押し出した。
「なんと罪深いことか。みんな可哀想な人たちだ。若造どもにこんな扱いを受けるなんて。南無阿弥陀仏、みんな眠りなさい。眠れば苦しみも消える。人生とは修行の道なのだから……」
痩せた老人は独り言を繰り返していた。
健二は遺体安置ケースを見ながら、鳥肌が立ち、さらに身を低くして、老人に見られないようにした。同時に心の中で不思議に思った。さっきあれだけの物音がしたのに、この老人は聞こえなかったのか?
科学的に説明がつかない!
夏川清美はあの人たちが必ず遺体安置ケースを探すだろうと予測していたので驚かなかったが、老人の独り言を聞きながら、足早に進み、発見されないように急いだ。