第137章 ごめんね、清美!

藤堂さんは夏川清美の言葉の冷たさを感じ取った。「清美ちゃん...」

夏川清美は藤堂さんの襟首を掴んだ。「久美は?」

久美はどこ?

夏川清美には怒りが溢れていたが、最後には「久美は?」という一言だけが残り、それには多くの苦しみが込められていた。

襟首を掴まれた藤堂さんは、罪悪感のあった顔に戸惑いの色を浮かべた。「清美ちゃん、どうしたの?」

どうしたって?藤堂さんによくそんなことが聞けたものだ。

夏川清美は笑おうとしたが、その笑顔は泣き顔よりも醜かった。「久美は?」

彼女はまるでその一言しか言えないかのようで、全身から溢れ出る悲しみは、通路にいる全ての人々に伝わっていった。普段は私的な場では不良っぽい態度を見せる沢田浩司でさえ、奇妙な心の痛みを感じずにはいられなかった。