第144章 二少の早期回復を願って

健二が入室すると、病室の雰囲気が何かおかしいと感じた。

結城陽祐を見て、そして夏川清美を見て、最後に清美の奇妙な髪型に目が留まった。少しの間外に出ていただけなのに、清美さんの髪型が変わっていた。しかも、半分結んで半分下ろしているなんて、一体どういうことだ?

それにカーテンはどうしたんだ?テーブルも...あれ、誰がリンゴを切ったんだ?疑問に思いながら、健二は若旦那の掛け布団に目をやり、何か変な感じがして急いで前に出た。「若旦那、すぐに取り替えます...え...」

布団に触れた瞬間、健二は結城陽祐のズボンの片方が普通なのに、もう片方が半分ほど破れているのを見た。破れているというのは、ズボンの裾が異常に荒々しくなっていたからだ。

健二は恐る恐る顔を上げ、青ざめた若旦那の顔を見た。「若旦那...」

普段なら、ズボンの裾が片方だけ破れているどころか、服の模様が非対称なだけでも耐えられない若旦那なのに、一体何があったのか。そう言いかけたところで、結城陽祐の怒りに満ちた声が聞こえた。「そのままにしろ。」

健二は自分の耳を疑った。引き抜こうとしていた布団を手に持ったまま、どうすればいいのか分からなくなった。

「取り替える必要はない。」結城陽祐は深く息を吸い、イライラを抑えた。

「...」健二は困惑して若旦那と清美を交互に見た。雰囲気が何だか変だ。

夏川清美は時計を見て、「もう遅いので、お先に失礼します。早くお元気になられることを願っています。」

結城陽祐は彼女の髪を避けるように視線を胸元に落とし、「健二、彼女を送れ!」

その口調は一見落ち着いているように見えたが、長年結城陽祐の側にいた健二には、その中に潜む激しい感情が聞き取れた。思わず清美をもう一度見つめた。

しかし、清美の表情は実に自然そのものだった。

清美が去ると、結城陽祐はすぐに健二に命じた。「アイマスクを持ってこい。」

見ないことが一番だ。

健二は乱雑な病室を見回して、「若旦那、病室を替えましょうか?」

普段なら、清美さんを送り出すこの短い時間どころか、一秒たりとも我慢できないはずで、おそらくすぐに病室を変えていただろう。

ましてや片方が破れた病衣なんて。

「黙れ。」替える必要があれば、こんな間抜けに言われる必要はない。

健二、「...」はい、気にならないなら替えなくて結構です。