第159話 もし私の切り札が久美ちゃんなら?

「話でもしようか?」

「何の話?」

夏川清美は、前回病院で結城陽祐と条件について話し合った時のことを真っ先に思い出した。あの不愉快で息苦しい感情は、今でも鮮明に覚えている。

今、何を話すというの?夏川清美は即座に林夏美のことを思い浮かべた。

今日は結城陽祐と林夏美の婚約パーティーだったのに、林夏美は殺し屋を雇った。

幸運にも死を免れたとはいえ、林夏美の犯罪の事実は変わらない。

そう考えると、夏川清美は車椅子の男を一瞥し、結城陽祐の仕事の効率の良さに内心感心した。きっと既に手がかりを見つけ、林夏美に辿り着いて、彼女と取引をしに来たのだろう。

なぜか不機嫌になった。この男は自分勝手な振る舞いをしておきながら、他人に反論の余地も与えないなんて、どういうことだ!

「話したくないと言ったら?」夏川清美はもはや結城陽祐の視線を避けず、輝く瞳で車椅子の男を見据えた。まるで見透かすかのように。