広大な高級ホテルはほとんど林夏美と結城陽祐の婚約パーティーに占められ、夏川清美には3階の100平方メートルにも満たない会議室が割り当てられた。
それも槙島家と聞いた結城お爺さんが、特別にホテル側に掛け合って譲ってもらったものだった。
しかし、それでもホテルは二つの婚約パーティーを完全に隔離し、正面玄関は結城家のゲスト用、側面玄関は槙島家の来客用とした。
中間には電子感応ドアが設置され、本日は完全に封鎖され、両側の来客の不要な衝突を避けるようにしていた。
一見すると槙島家はホテルから不当な扱いを受けているように見えたが、夏川清美は槙島家が敢えて結城家と同じホテルを選んだ理由を理解していた。
槙島家にとって、今日は婚約パーティーというよりも、虎の威を借る狐のように名を上げる機会であり、彼女との婚約は偽りで、結城家との縁を結ぶことが本当の目的だった。