山田麗は体が硬直し、声を震わせながら「私...私です」と答えた。
「山田麗さん、こんにちは。殺人教唆の容疑で告発されています。署までご同行願います」と警察官が言うと、一人が前に進み出た。
「殺...殺人?嘘でしょう!姉さんがそんなことするはずがない!」山田麗が反応する前に、山田美衣が飛び出してきた。
「殺人教唆です」と警察官は説明した。
山田麗は先ほどの配信で夏川清美が暴行される映像を思い出し、心が沈んでいった。「違います、誤解です。私は殺人を教唆していません」
「黙秘権がありますが、あなたの発言は全て証拠として使用されます」警察官は公式な口調で言い終わると、山田麗を押さえた。「署までご同行願います」
そう言うと、二人の警察官は山田麗に言い訳の機会を与えず、エレベーターの方へ連れて行った。
恐怖と不安で山田麗は思わず槙島秀夫に助けを求めた。「槙島様、助けて!お願いです!」
槙島秀夫はホテルに向かう途中で、山田麗が人を雇って林夏美を中傷し暴行したことを知っていたが、まさか人命に関わる事態になるとは思わなかった。特に被害者が今日の婚約者だったとは。
もうすぐ婚約式が始まるというのに、花嫁が事件を起こしてしまった。槙島秀夫は林夏美の生死には関心がなかったが、槙島家の利益は無視できなかった。
特にこの婚約のために、槙島家は多大な努力を払い、林グループの製薬会社に巨額の投資をしただけでなく、鈴木の母娘の法外な要求にも応じ、母娘だけで六百万円を飲み込まれた。
以前林夏美を懲らしめるのに使った金も含めると、二千万円近くが出ていった。そんな中、婚約式が始まろうとしているのに、林夏美のデブが殺されたというのか?
この認識に槙島秀夫は怒りで拳を握りしめた。そんな時に限って山田麗が助けを求めてきた。
パシッ!
槙島秀夫は考えることもなく、山田麗の既に腫れている頬を平手打ちした。「この売女め、林夏美を殺させたのか?私の邪魔をするとは!」
山田麗は助けを求める言葉を言い終わる前に、もう一発強烈な平手打ちを食らい、目が回るほどの衝撃を受けた。目に宿っていた助けを求める表情が、大きな屈辱と憎しみに変わった。「槙島秀夫、お前なんか地獄に落ちろ!」
目が眩んでいた。このクズだと知っていながら、自分から近づいていったなんて。