第173話 旦那様、弟を助けて!

冷たい表情の男がついに動いた。

藤原悠真は雲さんを乱暴に引きずっている鈴木政博に向かって歩いていった。「鈴木さん、私は雲さんの委任弁護士です。二週間前、私のクライアントは裁判所に訴訟を提起し、あなたを故意の傷害及び不法監禁で告訴しました。裁判所は既に受理しています。ご協力をお願いします」

雲おばさんの髪を掴んでいた鈴木政博の手が緩み、呆然としていた。自分が訴えられた?

鈴木政博だけでなく、林富岡も鈴木末子も、その場で呆然と立ち尽くしていた。

雲さんは椅子に崩れ落ち、目尻には涙の跡が残っていた。長年の辛い思いが遂に爆発したのだ。

藤原悠真は皆を冷ややかに一瞥し、無表情で道を開けると、二人の検察官が前に出て鈴木政博を拘束した。「裁判所の調査により、証拠は明白です。ご協力をお願いします」

「姉さん、義兄さん、助けて!」鈴木政博は慌てて林富岡の手を掴んで叫んだ。

林富岡は驚いて夏川清美を見つめ、何か言おうとしたが、娘の冷たい、さらには嘲笑的な眼差しに遭い、言葉が出なかった。彼は突然気づいた。最初から夏川清美は槙島秀夫と結婚するつもりなどなかったのだと。

反対しなかったのは、彼女が既に準備を整えており、この瞬間を待っていただけだったのだ。

林富岡から反応がないのを見た鈴木政博は、今度は鈴木末子に縋り付いた。「姉さん、姉さん、助けて、助けて、刑務所には行きたくない!」

林夏美とは違い、鈴木末子はこの弟に情があった。そうでなければ、自分が林家に嫁いだ際に、鈴木政博一家を引き連れてくることもなかっただろう。弟が逮捕されそうなのを見て、慌てて林富岡の手首を掴んだ。「あなた、弟を助けて。彼は冤罪よ、早く助けてあげて!」

「そうだよ、義兄さん、助けて。僕はあなたのために働いていただけなのに、見捨てないでください...」鈴木政博は鈴木末子が林富岡に助けを求めるのを見て、自分も懇願した。

林富岡は検察官たちを見た。「お二人とも、これは何か誤解があるのではないでしょうか。政博と雲さんは私の家の使用人です。たとえ揉め事があったとしても、些細なことで、裁判所まで行く必要はないでしょう」

「調査によると、鈴木政博による雲様への暴力及び不法監禁は既定の事実です。公務の執行を妨害しないでください」そう言って、検察官たちは鈴木政博を強制的に外へ連れ出そうとした。