第183章 婚約式が始まる

結城陽祐はすぐにその知らせを受け取った。

野村黒澤が近づいて来て、「若様、セキュリティシステムは起動しました。他に何かご指示は?」

「お爺さんと木村久美の安全を確保して、彼らの動きを監視しろ」結城陽祐は夏川清美の前でも遠慮なく言った。

夏川清美は以前の出来事から、結城家の平和な表面下には激しい暗闘が渦巻いていることを知っていたが、結城陽祐が直接話すのを聞くのは初めてで、少し驚いた。この男は、叔父たちが婚約式を台無しにすることを恐れていないのだろうか?

結城陽祐は横目で夏川清美の目に浮かぶ疑問を見て取り、「ん?」と声を掛けた。

「叔父さんたちとそんなに深い確執があるの?」普通、遺産争いでもここまで命を懸けることはないはずだ。結局は血の繋がった家族なのだから。

「母を殺され、父を殺された恨み、どう思う?」結城陽祐の目に冷たい感情が渦巻き、夏川清美の体が震えた。彼女は結城陽祐を呆然と見つめた。まさかそこまで深刻だとは。