「未来の日々はあなたがいてこそ美しく、
夢はより現実味を帯び、
私は愛に酔いしれることを学び、決して退かない、
あなたは私を守り、暗闇を通り抜けさせてくれる、
この恋の道を共に歩み続けたい、
最も大切なあなた……」
婚約式の会場は静かで、ループ再生される音楽が全員の耳に染み渡るほどだった。
結城陽祐と林夏美がゆっくりと会場に入場してきた時、参列者全員の頭の中に「最も大切なあなた」という歌詞が否応なく浮かんでいた。
生中継を担当するディレクターは口を開いたまま、解説の言葉を忘れてしまった。
沢田浩司は椅子に寄りかかり、眉を上げた。カメラを見た時点で結城陽祐が何か仕掛けてくると予想していたが、まさか美人の菅野と入場するとは思わなかった。彼は確かに唐明皇の素質があるようだ。