第190話 私たち、知り合い?

鈴木末子の「どうしてあなたなの?お姉さんは?」という言葉は、配信を見ていた全視聴者の心の声でした。

そして夏川清美の返事は、「おばさん、何を言っているのか分かりません」。

画面越しの視聴者たちは林夏美の顔を引き裂きたいほど怒り心頭でした。これはまさに極悪非道な行為ではないかと。

続いて鈴木末子の夏川清美への非難も、視聴者たちの心の声そのものでした。

鈴木末子が結城陽祐を非難した時、結城家の次男にも反感を持ち始めましたが、あるディレクターが我慢できずに結城陽祐のアップを映し出すまでは。

芸能界の数々のイケメンスターに夢中になっていた視聴者たちも、結城家の次男がこれほどの神々しい容姿とは思いもよりませんでした。

心の中で比較してみると、芸能界のどのイケメンスターも目の前の男性の美貌には及ばないことに気付きました。

みんな必死に言葉を探しましたが、結局結城陽祐を表現するのにたどり着いた言葉はたった二文字。

美しい!

とても美しい!

ゴシップ好きの視聴者たちは自分が何を見ていたのかすっかり忘れ、ディレクターさんがもう一度正陽様の顔を映してくれることを心待ちにしながら、自分の語彙力のなさを内心で嘲笑していました。

そうでなければ、なぜ「美しい」以外に正陽様を表現する言葉が思い浮かばないのでしょうか。

鈴木末子の結城陽祐への非難を見直すと、画面に釘付けになっていた女性たちの心境は一変し、コメント欄には「正陽様にはきっと何か事情があるはず」と溢れかえりました。

「正陽様が車椅子に座っているのは病気なの?」

「こんなにイケメンな方が、人を虐げるはずがない」

「そうよね、一目で病んでる美男子って分かるわ。あのデブが脅したんじゃない?」

「まあ、正陽様があのデブをかばう姿がカッコイイ!」

「気付いた?正陽様ずっとデブの手を弄んでるよ。もしかして本当にあのデブのこと好きなの?」

「正陽様、目を覚まして!」

夏川清美がある場所を指さすまで、視聴者たちの理性は戻らず、配信を見始めた本来の目的を思い出しました。

その後、林夏美がアダの助けを借りてカメラの前に現れました。

林夏美は一瞬の動揺の後、得意の演技を始め、「私のことを怒らないで」という一言で、大騒動をカップル間のちょっとした喧嘩に変えようとしました。