赤ちゃんの澄んだ声が病室中に響き渡り、皆の緊張した表情が和らいだ。
結城陽祐は腕の中で手足をバタバタさせる息子を面白そうに見つめ、その純真な瞳と目が合うと、冷たい心も柔らかくなっていった。
木村久美が生まれてから、結城陽祐は見たことはあったが、こんなに近くで観察したことはなかった。
最初に木村久美が結城家の本邸に連れてこられた時以外、彼を抱くことさえほとんどなかった。
木村久美の存在は彼にとってあまりにも予想外だった。
それまで結城陽祐は、自分がこんな早くに父親になるとは考えもしなかった。
結城家の複雑な家族関係のせいで、彼は親族との絆が薄く、唯一親しかったお爺さんとも、父の死によって少し距離があった。
さらに以前の体調のこともあり、結城陽祐は自分には父親になる資格がないと思っていた。