赤ちゃんの澄んだ声が病室中に響き渡り、皆の緊張した表情が和らいだ。
結城陽祐は腕の中で手足をバタバタさせる息子を面白そうに見つめ、その純真な瞳と目が合うと、冷たい心も柔らかくなっていった。
木村久美が生まれてから、結城陽祐は見たことはあったが、こんなに近くで観察したことはなかった。
最初に木村久美が結城家の本邸に連れてこられた時以外、彼を抱くことさえほとんどなかった。
木村久美の存在は彼にとってあまりにも予想外だった。
それまで結城陽祐は、自分がこんな早くに父親になるとは考えもしなかった。
結城家の複雑な家族関係のせいで、彼は親族との絆が薄く、唯一親しかったお爺さんとも、父の死によって少し距離があった。
さらに以前の体調のこともあり、結城陽祐は自分には父親になる資格がないと思っていた。
木村久美が本邸に戻された後も、自分が良い父親になれるとは思っていなかった。
むしろ最初に考えたのは、この子が自分にもたらす利益だった。
しかし今この瞬間、腕の中で無邪気に笑う我が子を見つめ、その無防備で純粋な姿に恥ずかしくなるほど、うっとりと見入ってしまい、思わず子供の笑顔につられて自分も微笑み、その眼差しには自分でも気付かないほどの優しさが宿っていた。
結城お爺さんはその光景を見て、目が潤んできた。
彼の人生で最も後悔していることは、愛する女性を守れなかったこと、そして最愛の次男も守れなかったことだった。ずっと心配していたのは、陽祐さんが父の死と母の離別により、孤独で傲慢な性格になってしまうことだった。外見がどんなに紳士的で正しくても、内面は荒涼としていた。
しかしこの瞬間、お爺さんは突然心が晴れた。
陽祐さんは時として冷酷な行動をとり、策略においては自分よりも優れているが、結局自分の教育は間違っていなかった。あの心はまだ柔らかいままだった。
人は外で生きていく中でどんなに疲れ、冷淡になっても、心の中に守りたい人や物があれば、人生には意味があるものだ。
「私たちは外に出ましょう」孫が木村久美に夢中になっているのを見て、お爺さんは目頭の湿りを拭いながら、秋山綾人と健二に小声で言った。
健二はまだ花の手入れを本当にするのかと聞きたかったが、すでに秋山綾人に引っ張られて外に出されていた。