第209章 私の可哀想な清美

自分が結城陽祐の人生最大の汚点になっていることを知らない夏川清美は忙しかった。

木村久美はもうすぐ三ヶ月になり、最初ほど甘えなくなったものの、機嫌を取るのは相変わらず大変だった。

幸い、藤堂さんは経験豊富で、結城家の使用人たちも行き届いていたため、夏川清美の時間に余裕ができた。

空き時間を見つけては、雲さんの引っ越しを手伝った。

林家での辛い労働から解放され、束縛もなくなった雲さんの顔色は随分良くなった。

一生懸命働いてきて、ようやく晩年に休息を得られた。小さいながらも洗練された内装の家を見て、目に涙が溢れた。

「こんな家、私なんかが…」雲さんはマンションの入り口で躊躇した。

夏川清美は雲さんの手を取って中に導いた。「誰があなたにあげるって言ったの?林家には私はもう戻れないから、このマンションは私の個人資産よ。私がいない時は見ていてくれて、いる時は料理と掃除をしてくれればいいの」