夏川清美が結城邸に戻ると、木村久美は目覚めてからまだ間もなく、彼女を見るなり抱っこをせがんでぐずり始めた。
藤堂さんは思わず文句を言った。「この小悪魔ったら、本当に偏り過ぎよ。同じようにミルクをあげているのに、どうして私のことはこんなに好きじゃないのかしら?」
「そりゃそうよ、私が可愛いんだもの」夏川清美は傲慢げに顎を上げた。
藤堂さんは笑いながら、最近聞いた噂を思い出した。「清美ちゃん、正直に教えてよ。あなたと陽祐さまが婚約したって本当?」
若い人たちと違って、藤堂さんは一日中子供の世話で忙しく、ネットにはあまり触れていなかった。今日になってやっと他の人から、夏川清美が木村久美の実の母親で、23日に陽祐さまと婚約したのも清美だと聞いたのだった。
夏川清美は一瞬固まった。婚約式の日、藤堂さんが7階で木村久美の面倒を見ていたことを思い出し、思わず恥ずかしそうに鼻を擦りながら、小さく「うん」と答えた。