第218章 この男は毒がある！

夏川清美の最初の反応は、何を話すの？

先ほどの林夏美の目に浮かんだ後悔の色を思い出し、最初に頷いて「はい」と言わなかったことを一生後悔するだろう。結城陽祐と結婚する機会を逃してしまったのだから。

でも彼女にはもう分かっていた。この男は最初からそんなつもりは全くなかったのだと。

彼は故意にやったのだ。

いわゆる遺憾や、さらには不満も、全て彼が林夏美のために演じたものだった。

林夏美が現実を理解できようができまいと、結城陽祐の言葉は彼女の心に棘として残り、これからも思い出すたびに腸が千切れるほど後悔することだろう。

そのため、結城陽祐が彼女と話したいと言った時、夏川清美は警戒心を持って彼を見つめた。

彼女はこの男が毒を持っていると深く感じていた。

意地が悪くて腹黒い。

「ん？」夏川清美が黙っているのを見て、結城陽祐は眉を上げて軽く声を出した。

「もう遅いので、木村久美の面倒を見に戻らないと。陽祐さん、また時間があるときにお話しましょう」と言いながら、夏川清美は退散しようとした。

結城陽祐は動かず、制止もせず、ただ静かに夏川清美を見つめていた。

この無言の圧力は、男が口を開くよりもさらに強い圧迫感を与え、夏川清美は軽くため息をつき、振り返って結城陽祐を見た。「分かりました。何を話したいんですか？」

「君は私の何を狙っているんだ？」結城陽祐は口元に薄い笑みを浮かべていたが、夏川清美には非常に危険な感じがした。

夏川清美はこの件が簡単には済まないことを知っていた。気まずそうに結城陽祐に笑いかけ、「録音は本物です」

「つまり君は私のお金だけが目当てなのか？」結城陽祐は不機嫌そうだった。まさか彼の人としての価値は彼女にとって魅力的ではないというのか。

「そうでもないです」夏川清美は正直に答えた。

結城陽祐の深い瞳に喜びの色が閃いた。「他に何を狙っているんだ？」

「あなたの家の木村久美です」夏川清美は即座に答え、さらに思わず尋ねた。「もし本当に私と結婚したくないなら、木村久美の親権を私に譲ってください。私はあなたに関わらないことを約束します」

夏川清美は結城家が木村久美の親権を手放す可能性は低いことを知っていたが、それでも一度試してみたかった。