第231章 藤原悠真の疑惑

藤原悠真が出廷したことで、この裁判はほとんど結論が見えていた。

故意の傷害罪と不法監禁罪、二つの罪が併合され、鈴木政博は懲役4年の実刑判決を受けた。

裁判官が宣告を終えるや否や、鈴木政博は低い声で叫びながら夏川清美に向かって突進してきた。「お前のような売女のせいだ、全部お前のせいだ……」

健二が前に出ようとしたが、夏川清美は手を振って制し、狂気じみた鈴木政博を冷たい目で見つめた。「私に指一本触れたら、刑務所で一生を過ごすことになるわよ」

夏川清美に向かって振り上げた鈴木政博の手が急に止まり、次の瞬間、法廷職員たちが彼を地面に押さえつけた。

「政博さん、私の政博さん……」鈴木末子は声を詰まらせて泣いていた。

夏川清美は林富岡に冷ややかな一瞥を送っただけで、藤原悠真の方へ歩き出した。太っているのに、何とも言えない威厳が漂っていた。

藤原悠真は終始夏川清美の動きを注視していた。冷厳な表情からは感情が読み取れず、心の中の疑問は更に大きくなっていった。

「藤原先生、雲おばさんとランチの予約を入れているんです。お礼がしたくて。お時間ありますか?」夏川清美は誠意を込めて誘った。

「申し訳ありませんが、他に約束がありますので。林さん、また機会があれば」藤原悠真は丁寧に、しかしきっぱりと断った。

彼は夏川清美の死について調査していた。より正確に言えば、夏川清美と林夏美の接点を調べていた。

この数日間、林夏美が何気なく見せる親しみやすさに、藤原悠真は違和感を覚え、疑問も湧いてきた。

彼は夏川清美のことをよく知っていた。善良ではあるが、きちんと分別のある人だった。

同情だけで自分のプライベートメールのパスワードを友人に教えるはずがない。しかも彼女が亡くなった時、この林さんは葬儀にも参列していなかった。

林夏美が当時出産中で夏川ちゃんの葬儀に参列できなかったとしても、その後はどうだったのか?

藤原悠真は林夏美のこの期間の行動を調査した。忙しかったとはいえ、夏川ちゃんのお墓参りに行く時間がなかったわけではない。しかし、一度も行っていなかった。

それなのに今になって夏川ちゃんの友人を名乗り、行動や振る舞いまでも夏川ちゃんそっくりなのだ。藤原悠真の疑念は深まるばかりだった。

そして今日、加藤迅が信州市に到着する。彼は必ず会わなければならなかった。