第232章 大切なのは今勝ったこと

裁判所を出ると、夏川清美は林家の車を見かけた。

林富岡は泣き崩れる鈴木末子を支えながら車に乗せ、林夏美は車椅子に座って、彼女を待っているようだった。

夏川清美は彼らを無視して立ち去ろうとしたが、林夏美は彼女を見つけると、山田真由に車椅子を押してもらって近づいてきた。「あなた、本当に勝ったと思っているの?」

「そうじゃないの?」夏川清美は眉を上げて林夏美を見た。

林夏美は言葉に詰まり、顔を真っ赤にした。こんなに厚かましい人を見たことがなかった。「どれだけ勝てると思っているの?」

「どれだけ勝てるかは重要じゃない。今、私が勝ったってことが重要なの」夏川清美はぽっちゃりした顔で輝くような笑顔を浮かべ、車椅子の林夏美を堂々と見つめた。

林夏美は以前の臆病で、自信がなく、愚かだった夏川清美がこんな風に変わるとは思わなかった。