第239章 私と結婚したくないの?

夏川清美は顔に疑問を浮かべた。

なぜ彼の言葉から嫉妬の匂いを感じたのだろう?

そんなはずはないのに。

結城陽祐の「間違えたら千刀万剐にするぞ」という目つきに、正直に答えた。「あなたはイケメンです」

二度の人生を生きてきたが、結城陽祐ほど美しい男性を見たことがない。

藤原悠真もなかなかだが、どちらかというと冷たい感じだ。

結城陽祐は違う。本当に美しい、国を滅ぼすほどの美しさだ。

時々、夏川清美は不思議に思う。前の自分の性格で、どうやってこんな妖艶な男性と関係を持てたのだろう?

夏川清美の答えに結城陽祐は少し満足したが、まだ不機嫌そうだ。「なぜ彼をずっと見ていたんだ?今は私の婚約者だということを忘れるな」

「ゴホッ、ゴホッ」夏川清美が反応する前に、結城お爺さんが咳き込み始めた。

夏川清美はそこでようやくお爺さんの存在を思い出し、恥ずかしそうに結城陽祐を睨んだ。

結城陽祐は嫌そうにお爺さんを見て、「喉の調子が悪いなら、ここは病院だから、執事に耳鼻科に連れて行ってもらったら?」

「いや、もう帰るよ」お爺さんは手を振り、それから夏川清美に非常に優しく言った。「清美ちゃん、久美は藤堂さんと山田お母さんが面倒を見てくれるから、病院で陽祐さんの付き添いをしてあげなさい。若い二人は一緒にいて、愛を育むべきだからね。このお爺さんはもう邪魔をしないよ」

そう言うと、二人の反応を待たずに結城執事を連れて出て行った。

夏川清美と結城陽祐は「……」

偽の夫婦、いや、偽の婚約者同士に育むような愛なんてあるのだろうか?

夏川清美は奇妙な表情で結城陽祐を見た。

結城陽祐は嫌そうに夏川清美を見て、「お爺さんを買収したのか?」

「私が...そんな人に見える?」夏川清美は突然の質問に戸惑いながら、嫌そうに聞き返した。

結城陽祐は頷き、そして自分の言い残したことを思い出したように続けた。「どうあれ、今は私の婚約者なんだ。しかも公衆の面前で婚約式を挙げたんだから、これからは大人しくしろ。他の男を見るたびに目を釘付けにするのは品がない」

夏川清美は「……」

彼が偽紳士なだけでなく、典型的な直情的な男だということに今まで気づかなかった。

イケメンでなければ、注射でも打ってやりたいところだ。