レストランは静かだった。
突然の気まずい沈黙が流れた。
夏川清美は黙って自分の席に戻ったが、この後の朝食を食べるべきか食べないべきか分からなかった。
「あの……」
「今何を見てたんだ?」結城陽祐は、普段から自分の前で遠慮のない態度を取る祖父が、ぽっちゃりくんの前でもそんな態度を取るとは思わなかった。清美以上に気まずく感じていた。
特に、おじいさんのあの言葉は何だ?彼の体調があまり良くないから、よく面倒を見てあげて、疲れさせないようにって?
何かしなければ、おじいちゃんは自分が完全に回復したと思ってくれないのか!
いや、考えがずれてきた。
結城陽祐は慌てて思考を止め、夏川清美の耳たぶが赤くなり、落ち着かない様子を見て、ますます祖父に腹を立て、話題を変えた。
夏川清美は天恵を受けたかのように、急いで携帯を取り出し、「見なかったの?昨夜、X女優が彼氏の不倫相手を捕まえに行ったんだけど、どうなったと思う?」
普段の夏川清美はそれほど噂話好きな人ではなかった。
ただ、今日は雰囲気があまりにも気まずく、さらにこのスキャンダルが林夏美に関するものだったので、少し注目していた。
結城陽祐は当然どうなったか知っていた。結局は自分が仕組んだことだったのだが、この時は演技をして「どうなったんだ?」と聞いた。
「間違えて捕まえちゃったの。ベッドにいたのは林夏美と槙島秀夫だったわ」この二人が絡み合っているなんて、夏川清美には意外だった。
しかし、林夏美は山田麗の親友を自称し、二人は頻繁に交流していた。特に婚約式の日には、正義の味方として勇敢に自分の不倫相手という立場を打ち砕いた。
その後、結城陽祐に反論され、ネットで散々叩かれたものの、山田麗との友情を疑う人はいなかった。
しかし、このビデオが公開されると、林夏美は逆に本当の不倫相手となり、完全に打ち砕かれた形となった。わずかに残っていた一般人からの好感度も、おそらく底をつくだろう。
これからは芸能界で生きていくのが難しくなるだろう。さらに、以前セレブ界で苦心して作り上げたイメージも台無しになり、再び認められるのは容易ではないだろう。
結局、誰も他人の彼氏を狙う親友なんて好まないから。
とても失格だ。
「あの二人か?ああ、いいんじゃないか」結城陽祐は聞き終わると、とても的確に評価した。