第259章 結城お爺さんに洗脳パウダーを贈りませんか?

「ぷっ!」

夏川清美は朝食を食べていて、牛乳を一口飲んだところで、林夏美と槙島秀夫がX姓の女優とホテルで不倫現場を押さえられたというニュースを見て、思わず「ぷっ」と吹き出してしまった。

そして彼女の向かいに座っていた結城陽祐の顔に、牛乳が真っ直ぐに飛んでいった。

夏川清美は我に返り、慌てて結城陽祐の側に駆け寄り、ティッシュを取り出して彼の顔を拭きながら、必死に謝り続けた。

しかし男は死の凝視のように、ただ陰鬱な目で彼女を見つめていた。

食堂の雰囲気は少し気まずくなった。

夏川清美は助けを求めるように結城お爺さんを見たが、お爺さんは何も聞こえなかったかのように、自分の食事に集中していた。

仕方なく、夏川清美は小さな声で尋ねた。「じゃあ、どうすればいいの?私の顔にも牛乳かけてみる?」

そう言って、結城陽祐の前に牛乳を一杯注いで置いた。

結城陽祐は人生で初めて顔に牛乳をかけられ、その怒りは想像に難くない。怒りが収まらない中、突然夏川清美のそんな言葉を聞き、横目で牛乳を見て、そして夏川清美の大きな顔を見ると、怒りと笑いが混ざった表情で「本当にいいのか?」と言った。

夏川清美は正直な態度で「私が悪かったから、受け入れます」と答えた。

結城陽祐はその牛乳を手に取り、骨ばった長い指でグラスの底をゆっくりと撫で、横目で夏川清美を観察した。

夏川清美は彼が自分の言葉を冗談だと思っているのではないかと心配し、自分の頬を叩きながら「大丈夫、どうぞ」と言った。

「ごほんごほん...」存在感を消そうと努力していた結城お爺さんが、ついに咳き込んでしまった。

「お爺さん、大丈夫ですか?」夏川清美は心配そうに尋ねた。

結城お爺さんは何とか首を振り、孫の手に持った牛乳と、頬に残った牛乳の跡を見て、意味深な口調で言った。「若い二人は、そういうのは部屋でやりなさい」

夏川清美と結城陽祐は「...」

「それに清美、陽祐さんは手術したばかりで体調が良くないから、よく面倒を見てあげなさい。でも無理はさせないように。体を壊したら大変だからね」結城お爺さんは言い終わると、非常に察しよく立ち上がった。「もちろん、ここがいいというなら、お爺さんが場所を空けてあげますよ」

そう言って結城お爺さんは執事を睨みつけた。「何をぼんやり立っているんだ、この年寄りは!」