鈴木末子は娘の憤慨した様子を見て、「何があったの?」と尋ねた。
林夏美は昨夜の結城和也の言葉をそのまま鈴木末子に伝えた。
鈴木末子は聞き終わると驚きの表情を浮かべ、「本当なの?」
「お母さん、こんなことで冗談を言うわけないでしょう?結城和也が直接言ったのよ。だから、前に私を馬鹿にしていた人たちが、みんな取り入ろうとしてきて、瑞穂エンタメの副社長が personally 私を家まで送ってくれたの」林夏美は母親が信じないことを恐れ、慌てて説明した。
鈴木末子はまだ衝撃を受けた様子で、「これは...本当なのね?」
「もちろん本当よ!」林夏美は断固として答え、すぐに声を低くして、「あのじじいが一手を残していたなんて。表面上は私たちに寛大な顔して、実際は乞食のように扱っていたのよ」
鈴木末子は黙っていた。これは彼女も予想していなかったことだった。
彼女は富康製薬で二十年働き、最初は後方支援の職員から、今では富康製薬の財務の大半を掌握するまでになり、林富岡のことは隅々まで理解していると自負していた。林富岡が結城財閥のこれほどの財産を握っているとは全く想像もしていなかった。
それは結城財閥の株式なのだ!
たった一株か二株でも、その配当金は他の企業とは比べものにならない。
富康製薬がここ数年赤字続きだということは置いておいても、全盛期の富康製薬の利益でさえ、結城財閥の株式一年分の配当金には及ばないだろう。
「様子を探ってみるわ」鈴木末子はしばらく沈黙した後、口を開いた。
林夏美はまだ盲目的な興奮状態にあり、鈴木末子の言葉を聞いて、「お母さん、絶対にその株式を手に入れる方法を考えて」
鈴木末子は頷いて、「分かってるわ」
林富岡が非道なら、彼女が義理を欠いても文句は言えない。こんな大きな事を、これだけの年月彼女に一言も言わなかったなんて、本当に彼女をバカにしているのか。
「お母さん、どうするつもり?」林夏美が近寄ってきた。
「私は...」
コンコンコン。
「末子さん、夏美の部屋にいるの?朝ご飯ができたよ。母娘で話し込むのはもうやめて、早く手を洗って食べに来て」林富岡は身支度を整え、妻の姿が見えないので、林夏美の部屋のドアをノックした。