林夏美は邪魔が入って、結城和也に近づくのが難しくなってしまった。
しかし今はそんなことを気にしている場合ではなく、結城和也の言葉が頭から離れなかった。「お前の父は我が結城財閥の株主だぞ」。結城財閥の株主?
林富岡が結城財閥の株主?なぜ母と自分は知らなかったの?
そして林富岡が結城財閥の株主なら、どうして富康製薬の資金不足で悩んでいたの?
でも結城家二番目の若旦那である結城和也が、嘘をつくはずがない!
じゃあ、これは本当なの?
結城財閥の株主ってどういうこと?たとえ2パーセントの株式でも、年間の配当金だけで半生遊んで暮らせるのに、林富岡はこんな大きなことを母に一度も話さなかったの?
これは、彼が母娘を本当には受け入れていなかったということ?
そう考えると林夏美は不愉快になった。あの老人が母と自分にどれだけ優しかったと思っていたのに、結局これまでのことは些細な恩恵に過ぎず、本当の財産は隠し持っていたのだ。