第270章 誰が狩人で誰が獲物か?

結城和也は興味深げに、姉妹のために命を懸けられそうな勢いの林夏美を見つめ、口角を上げた。

彼はこの狩人になった感覚が好きだった。

特に、向かいの女が自分こそが狩人だと思っているときは。

ふん、面白い。

「私は林製薬の林夏美と申します。結城様、お目にかかれて光栄です」林夏美は落ち着いた態度で答え、結城和也に手を差し出した。

先ほどまでの凍りついた雰囲気は、林夏美の一言で和らいだ。彼女が自己紹介をし、さらに命知らずにも結城和也と握手しようとしたことで、周りの者たちは林夏美の失態を見物しようと笑みを浮かべていた。

結城和也は動かず、周りの小声の噂話を聞きながら、批判的な目つきで林夏美を観察した。

嘲笑の声はさらに大きくなり、床に座っている鈴木沙耶香までもが林夏美を嘲るように見つめていた。本当に分かっていない、結城様を槙島秀夫のような下劣な男と同じだと思って、簡単に誘惑できると思っているのか?