結城陽祐は断固として言い、夏川清美は思わず男の顔を横目で見て、この男がまた何か悪だくみをしているのではないかと推測した。
「忍びないのか?」結城陽祐は清美の目を見つめ、ぽっちゃりくんが心を痛めているのだと思い、眉を上げて尋ねた。
清美は首を振り、「ただ、あなたがどうやって彼の弁護士を説得したのか気になっただけです。」
清美は手元の契約書に目を通し、少し可笑しく思った。この中には林富岡が気づかなかった微妙な言葉の罠があるのに、彼の弁護士がどうして気づかないはずがない?
「ああ、言い忘れていたが、山田弁護士の事務所は二日前に私が個人名義で買収した。客観的に言えば、山田弁護士は私の部下だから、当然私の利益を考えなければならない。それに、この契約書に問題があるのか?」結城陽祐は契約書を取り上げて目を通した。
清美は首を振った。契約書に問題はないが、臆病な富岡さんは失望することになるだろう。
「ありません。」清美は肩をすくめた。この狡猾な男め。
「それならよし。」結城陽祐は清美の態度に満足していた。彼は限度なく善良な人々が大嫌いだった。他人に害されても、相手のために言い訳を探し、最後には悲惨な結末を迎える。そんな人々には全く同情の余地がない。
結城陽祐にとって、たとえ実の親でも、自分を傷つける資格などないのだ。
清美は結城陽祐の心中を知らず、真剣な表情で男を見つめて言った。「ありがとうございます。」
結城陽祐がいなければ、彼女の復讐計画はこれほど早く進まなかっただろう。特に、鈴木の母娘が、林富岡がこの五十二パーセントの株式を結城財閥ではなく彼女に譲渡したことを知った時の反応が、とても見てみたかった。
林富岡がどうやってあの母娘を説得したのかは分からないが、きっと彼女のことには触れず、多額の金銭を約束したに違いない。三日後、入金された資金が自由に使えないことが分かった時、いつもの偽善的な態度を維持できるだろうか。
「礼を言う必要はない。私は損な取引はしない。林グループ傘下に製薬工場があり、そこには特許を取得した三種類の日用医薬品がある。今やそれはあなたのものだが、私は契約書に一項目追加した。今後、富康製薬は結城財閥傘下の病院に優先供給しなければならない。」結城陽祐は少しも隠す様子もなく説明したが、それが最高の隠蔽でもあった。