第294章 50億、本当に払うつもり?

結城家の話が出たからには、鈴木末子はこの良い機会を逃すつもりはなかった。

林富岡の肩をマッサージしながら、優しい声で尋ねた。「あなたはどう思うの?会社の現状では52パーセントの株式が5000万円の価値があるのは、まあまあだと思うわ。でも結城財閥と比べたら雲泥の差ね。結城財閥の5パーセントの株式配当だけでも年間5000万円だって聞いたわ。」

「そりゃそうだ」林富岡は何気なく答えた。結城財閥の資産といえば、5パーセントどころか2パーセントの株式でさえ、年間の配当金は相当な額で、5000万円なんて大したことないのだ。

林富岡は使用人に料理を運ぶよう指示したが、この当たり前の言葉で鈴木の母娘がさまざまな思惑を抱いていることには気付いていなかった。

特に林夏美は、継父の言葉を聞いて、結城和也が自分を騙っていないと確信した。そうでなければ、母が結城財閥の5パーセントの配当が林グループの52パーセントの価値に匹敵すると言った時、彼がそんなに自然に受け止めるはずがないと。

鈴木末子はより慎重で、林富岡の言葉を聞いた後、さらに探りを入れた。「結城財閥が最近不安定で、少数株主の株式を買収しているって聞いたわ。どんな価格で買い取っているのかしら…」

「人の心配なんかするな。まずは株式の件について話し合おう」林富岡は今、結城家のことで頭を悩ませていたので、鈴木末子がそれを持ち出すと、すぐに嫌そうな口調になった。

しかし彼のこの態度は、鈴木末子と林夏美には心虚としか映らず、むしろ結城財閥の5パーセントの株式が彼の手中にあることを確信させた。

確信を得た鈴木末子は焦らなくなり、林富岡の横に座って「あなた、どうお考えなの?」と尋ねた。

傍らの林夏美は良くない予感がした。

「こう考えているんだ。今、会社は資金が必要で、うちの出費も多い。結城様が申し出てくれたんだから、断れば林家は信州市で立っていけなくなるだろう。だから私たち三人で株式を分け合って、52パーセントを結城様に譲ろうと思う」

「お父さん…」林夏美は、この継父が良からぬことを企んでいると分かっていた。