林邸。
鈴木末子は風呂から出てくると、林富岡がまだ先ほどと同じ姿勢でいるのを見て、慌てて尋ねた。「あなた、どこか具合が悪いの?」
「大丈夫だ。ただあの二人の馬鹿者に腹が立っているだけだ」林富岡の声には疲れが滲んでいた。
「じゃあ、もう一度病院に...いいえ、家庭医を呼びましょうか」鈴木末子は言葉を途中で意図的に止め、言い方を変えた。
林富岡は怒って言った。「必要ない。大丈夫だ。さっきなつき信託に連絡して、明朝に変更した。その時に具体的な状況を確認して、株式が手に入れば、すぐに手続きを済ませる」
「弁護士を連れて行った方がいいんじゃない?」鈴木末子は目を輝かせた。
「ああ、遺産分配に関わることだから、当然必要だな」林富岡は頷いた。
鈴木末子は口を開きかけた。「あなた、私も...」
「もちろん一緒に来てくれ。お前がいないと落ち着かない」林富岡は前回の富康製薬の株式の件を覚えていて、今回は慎重になっていた。
「はい、今度は絶対に失敗しませんから」鈴木末子は嬉しそうに優しく約束した。
しかし、それを言い終えると、娘のことを思い出し、表情が悲痛になった。今日、彼女と林富岡が病院から追い出されたのはまだいいが、夏美ちゃんまで追い出されてしまって...
医師の診断書と夏美ちゃんが直面するかもしれない将来のことを考えると、鈴木末子は憎しみと痛みを感じた。
林夏美というあの小娘を早めに始末しなかったことを後悔し、夏美ちゃんの足が今のような状態になってしまったことを恨んだ。そして今では病院が夏美ちゃんを受け入れてくれず、治る希望がさらに遠のいてしまった。
彼女の人生で最も愛する娘が、今では不具者になるかもしれない。それを考えただけで、鈴木末子は呼吸をするのも辛かった。
林富岡は鈴木末子の青ざめた顔色を見て、心配そうに尋ねた。「末子さん、どうしたんだ?顔色が悪いぞ」
「あなた、夏美ちゃんの足が...夏美ちゃんの足が...」元々心を痛めていた鈴木末子は、それを口にすると更に辛くなり、声を詰まらせた。本来、今日病院で林夏美に土下座したのは、まず林富岡に自分の誠意を示し、結城財閥の株式を手に入れた時に有利に立ちたかったからだ。次に林夏美を追い詰めて、林富岡を病院に留めることで、夏美ちゃんも留まれるようにしたかったからだ。