結城邸。
夏川清美はタブレットを置き、思わず鈴木末子に感心してしまった。
この女性は本当にあの言葉通りだった。心が強くなければ、立場を保てない。
彼女は突然、鈴木さんがどんな家庭の出身なのか気になった。富と地位のためなら、手段を選ばないと言っても過言ではない。
こんな母親を持つ林夏美が、あんな狂気じみた行動を取るのも納得できる。
この母娘は骨の髄まで恐ろしい野心に満ち、法と人命を軽視している。
「ん?」結城陽祐は彼女が読み終わっても黙っているのを見て、林富岡に同情的になったのかと思った。
「彼女はきっと林富岡名義の全財産を自分と林夏美の名義に移したのでしょう」でなければ、殺意を抱くはずがない。
この男はもう彼女にとって用済みだった。
「だから何事も悪い女には関わるべきじゃないよね」結城陽祐は夏川清美に向かって眉を上げた。
夏川清美は言葉に詰まり、「あなたの部下で鈴木末子の過去を調べられる人はいる?」
「もちろん。報酬は?」澄んだ声に笑みを含ませ、報酬の話を面白がっているようだった。
夏川清美はそれを聞いて何かを思い出し、箱の中の贈り物の山から結城和也のダイヤモンドを取り出し、結城陽祐の手に押し付けた。「これで結婚指輪を作るって言ってたでしょう?残りはあなたの報酬にしてください」
「ふん」結城陽祐はピンクダイヤモンドを握りしめ、軽く笑い、突然思いついたように「つまり、これは遠回しなプロポーズ催促?」
「考えすぎよ。私まだ若いし、急いでないわ」夏川清美は若い体に慣れてきていた。
「はは」彼はぽっちゃりくんからこんな若さをアピールする言葉を聞くのは初めてで、からかうように「そうでもないよ。19歳で来年の誕生日が過ぎれば入籍できるんだから」
夏川清美は一瞬驚き、すかさず返した。「だから結婚を急いでいるのはあなたでしょう?私より6歳も年上なんだから、厳密に言えば、おじさんって呼べるわね」
「げほっ、げほっ」結城陽祐は不意を突かれ、自分の唾で むせそうになり、信じられない様子で目の前の女性を見つめた。「もう一度言ってみて?」
夏川清美は反撃のつもりだったが、この男が本気にしている様子に驚いた。「何よ?」