第356章 火事場泥棒

林家。

鈴木末子は契約書を持って林家へ急いでいた。槙島秀夫はすでにリビングに座っていた。

林夏美は左足の感覚を失い、イライラして不機嫌な表情を浮かべていた。特に槙島秀夫の整った身なりを見ると、胸が悪くなった。

槙島秀夫は林夏美の視線を感じ取り、「愛しい人、その目つきはなんだい?」

「寝た後は、あなたの愛人たちをちゃんと管理してよ。私のところに存在感を示しに来させないで」と林夏美は嫌悪感をあらわにして言った。

「へぇ、そんなことがあったのか?分かった、次は彼女たちをしっかり教育しておくよ」槙島秀夫は恥知らずにも、余裕たっぷりに返した。

林夏美の顔色が青ざめたり赤らんだりした。「恥知らず」

「夏美ちゃんはなんて言うんだ。私が恥知らずなら、君は潔白なのかい?」槙島秀夫は不満げに言った。以前は彼女との結婚で利益を得る必要があったから、彼が彼女に頭を下げていた。今や彼女たちは林家の最後の株式まで売ろうとしているし、彼女の足もいつ治るか分からない。

そんな林夏美という何の後ろ盾もない跛は、何を根拠に彼に媚びを売らせようというのか?

「あなた……」

「愛しい人、そんなに怒らないで。老けちゃうよ」槙島秀夫は言いながら、すでに林夏美の側に座り、彼女を抱き寄せ、不埒な手つきで撫でた。

「誰があなたの愛しい人よ?槙島秀夫、この汚らわしい人!離れなさい!」林夏美は槙島秀夫に触れられ、全身に鳥肌が立ち、吐き気を催すほど気持ち悪く、大声で叱りつけた。

しかし槙島秀夫は収まるどころか、さらにひどくなった。

「あなた……」

そのとき鈴木末子が入ってきた。

槙島秀夫は林夏美を抱き寄せたまま手を放さず、にやにやしながら鈴木末子を見て、「お義母さん、お帰りなさい」

「お母さん!」林夏美は助けを求めるように鈴木末子を呼んだ。

鈴木末子は不快そうに槙島秀夫を見た。「秀夫さん、夏美はまだあなたと結婚していないのだから、けじめはつけないと」

そう言いながら前に出て、娘を支え起こした。「誰か、お嬢様を部屋まで案内して」

「お母さん、彼はサインしたの?」槙島秀夫の下品な手から逃れることよりも、母親が林富岡の資産を手に入れたかどうかの方が気になった。