一時間後。
階下から物音が聞こえなくなり、夏川清美はようやくゆっくりと口を開いた。「時間だわ。送り出してあげて」
健二は二人を連れて急いで階上に上がった。衣装部屋に着くと、三人の男は呆然と立ち尽くした。
広々とした衣装部屋は床一面に服や靴、バッグが散乱し、二人の女性がそれぞれ部屋の端でぐったりとしていた。
階下にいた時は声を張り上げていたものの、少なくともメイクは完璧で服装も整っていた林明里は、前髪が一部引き抜かれて頭皮が見えそうになり、残りの半分は額に張り付き、顔のメイクは大半が崩れ、深夜にテレビから這い出てきた女の幽霊のように見えた。
山田真由も良い状態ではなく、顔中に目を覆いたくなるような血痕があり、年齢を重ねた目立たない顔をより一層凶暴に見せていた。今も荒い息を吐きながら、まだ罵り続けていた。