第388章 二少、申し訳ありません

空は曇り、川の水は激しく流れていた。

陸偵は結城陽祐を見つめ、「正陽様、この水域は流れが急で、専門家でも安全とは限りません。よくお考えください」と言った。

「ありがとう」結城陽祐は言い終わると、安全ロープを身につけ、救助隊員と共に川に入ろうとした。

ブルブルブル……

結城陽祐が水に入ろうとした瞬間、彼の携帯電話が突然振動し始めた。眉をひそめながら、一目も見ずに野村越に手渡した。

野村越は口下手で、まだ制止しようとしたその時、着信番号を見て、普段は感情を表に出さない人が突然興奮して結城陽祐の腕を引っ張った。「正陽様、正陽様……」

結城陽祐は、まだ自分を止めようとしているのだと思い、表情は一層暗くなった。「離せ」

野村越は離さず、「正陽様、健二です、健二から……」

しかし、正陽様が理解していないことに気づき、急いで付け加えた。「健二からの電話です、健二からの着信です」

結城陽祐の手の中の物が固まった。「何、何だって?」

ぽっちゃりくんは健二と一緒にいる。もし健二が無事なら、それは自分のぽっちゃりくんも無事ということではないか。急いで携帯電話を奪い取り、通話ボタンを押した。

電話がつながると、すぐに健二の落ち込んだ声が聞こえた。「正陽様、申し訳ありません……」

その一言で、結城陽祐のようやく蘇った心が再び氷窟に落ちた。「何だって?もう一度言え!」

健二は正陽様がすでに知っていることを察し、さらに気が引けた。「正陽様、申し訳ありません。本当に若奥様を止められなかったんです。ご存知の通り、若奥様の命令は従わざるを得ません。さもないと針で刺されてしまいます。だから、これは本当に私のせいではありません」

携帯電話を握りしめ、体が硬直している結城陽祐は、聞けば聞くほど様子がおかしいと感じ、震える声で尋ねた。「今どこにいる?」

「あ……婦人科外来です」健二は正陽様が誠愛病院にいることを知らないと気づき、わざと前置きを省いた。

結城陽祐は一瞬にして全身が温かくなるのを感じた。彼が今言ったのは「彼ら」で、健二は否定しなかった。そして婦人科外来にいると言った。それは清美が検査を受けているということで、彼女は無事だ、つまり彼女は無事なんだ!

「彼女に代わってくれ」結城陽祐は必死に声を抑え、興奮を隠そうとした。落胆するのが怖かった。