検査が終わり、夏川清美は服装を整えて出てきた。外で行ったり来たりしている男性を見て、健二に尋ねた。「彼、どうしたの?」
健二は首を振った。
その時、結城陽祐は物音を聞いて、急に夏川清美の方を見た。琥珀色の細長い瞳で彼女をじっと見つめ、骨の髄まで見透かすかのようだった。
夏川清美は思わず自分の姿を見下ろしたが、何も問題は見当たらず、この男性は一体どうしたのだろうと不思議に思った。
すると突然、結城陽祐が素早く近づき、彼女を抱きしめた。
結城陽祐特有の清々しい香りが一瞬で夏川清美の鼻腔いっぱいに広がり、彼女は体が固まり、両手を宙に浮かせたまま、頭は男性の胸に押し付けられ、少し戸惑いながら顔を上げた。
完全に呆然としていた。
この数日間、結城陽祐との関係は良好だったが、最も親密な行為と言えば、時々手を握る程度で、それ以上の越権行為はなかった。
なのに、なぜ突然抱きしめてきたのだろう?
しかしそれは重要なことではなかった。夏川清美は自分の心臓が暴走していることを感じ、心臓が制御不能にドキドキと、まるで胸から飛び出しそうなほどで、呼吸さえも困難になっていた。
そして彼女を抱きしめる男性はますます力を込め、夏川清美は目の前の男性に深く愛されているような感覚に襲われた。
これは彼女が今まで経験したことのない感覚だった。
とても新鮮で、でも抑えきれない胸の高鳴りを感じた。
傍らで健二は驚きのあまり顎が外れそうになっていた。二少のために買った恋愛の秘訣の本は今日の午後に届いたばかりだったが、もう必要なさそうだ。しかし、二少の恋愛テクニックはなぜ突然こんなに進歩したのだろう?
後ろからついてきた野村越は、抱き合う二人を見て深いため息をついた。
若奥様が無事で良かった、本当に良かった。
さもなければ、二少が今日どんなことをしでかすか分からなかった!
「あの...咳咳...離してもらえませんか?」夏川清美は締め付けられて咳き込み、息苦しくなり、しばらくしてようやく男性に声をかけた。
結城陽祐は顔を下げ、締め付けられて息も荒く、頬を赤らめている夏川清美を見て、手を伸ばして彼女の鼻をつまんだ。「なんてドジなんだ?」