「遠山正を知っているのか?」結城陽祐はそう考えると、安堵しながらも不満を感じていた。
「遠山正って誰?」夏川清美はその人物のことを聞いたこともなかった。
結城陽祐は眉をひそめた。「じゃあ、なぜ突然寝返って、自分のやったことを正直に話したんだ?」
夏川清美は突然、メールボックスの中の'句点'のことを思い出し、急いで古いノキアの携帯を取り出してメールボックスを開くと、案の定'句点'からの返信があった。最初の一文は国際病院に行くなというもので、その後で彼女に会いたいと書かれていた。
「あなたの言う遠山正はこの人のこと?」夏川清美は携帯を男に見せた。
結城陽祐は内容を簡単に確認し、複雑な眼差しで夏川清美を見つめた。「そうだろうな。でも、お前たちはどういう関係なんだ?」
後ろにいた健二は身震いした。やばい、二少爺様がまた嫉妬モードに入ってきた。
「QQの友達?」心理年齢27歳の夏川清美は、QQの友達という言葉を口にして少し恥ずかしくなった。この年になってQQの友達なんて、誰が想像できただろう。
結城陽祐は冷たく鼻を鳴らし、野村越の方を向いた。「遠山正はどこだ?連れてこい。」
「それは...警察に任せるとおっしゃったではないですか?」野村越は困った様子だった。
「交渉してこい。理由を知りたい。」結城陽祐は遠山正のような人間が理由もなく夏川清美を助けるとは信じられなかった。彼の予想通り、清美の行動と経路図は全て彼が高橋拓海に送ったものだった。突然の態度の変化は不自然だった。
夏川清美は弱々しく手を挙げた。「理由は私が知っているかもしれません。」
結城陽祐は眉をひそめた。
「あなたの言う遠山正は...私のQQの友達だと思います。でも私は以前病気になってから、それ以降QQにログインしていなくて、どういうわけか相手は林明里を私だと思い込んで、ずっと連絡を取り続けていたみたいです。今日古い携帯を確認したら、遠山正が何年も前に送ったメールを見つけて、返信したんです。その時に私の名前も書きました。」夏川清美もこんなにドラマチックな展開になるとは思っていなかったが、遠山正に関するこの部分については、確かにはっきりと思い出せなかった。
それが年月が経ちすぎて林夏美が忘れてしまったのか、それとも何か起きて意図的に記憶から消し去ったのかはわからなかった。