夏川清美は病床で表情を変える若い少年を見つめ、最後に苦しそうな表情を浮かべ、眉をひそめて目を閉じた。
「お兄さんより年上だから、お兄さんって呼んでもいい?」
「どうして?」
「お兄さんがいれば、守ってもらえるから。クラスの女の子がいじめられてたけど、お兄さんが仕返しをしてからは、もう誰もいじめなくなったの。だから私もお兄さんが欲しいの」
「いじめられてるの?」
「……そうでもないかな」少女は躊躇いながら答えた。
「もしいじめられたら教えて。仕返ししてやるから」
「本当?」
「もちろん本当さ。男の子は約束を守るものだからね」
「ありがとう、お兄さん。お兄さんって優しいね」
「バカな蝶々」少年は言った。
その後、親しくなってからは、少女はいつもお兄さんお兄さんと呼び続けた。まるで、そうすれば本当に守ってくれる人が現れるかのように。