病院を出ると、結城陽祐の気分は特別に良く、夏川清美の手を握りながら、周りの視線など気にせずに歩いていた。
むしろ夏川清美の方が少し恥ずかしがっていた。彼女は痩せたとはいえ、まだ太めではあったが、普段なら道を歩いていても特に異様な目で見られることはなかった。でも今は違う。
隣の男性は光を放つような存在で、彼が一人で歩くだけでも百パーセントの注目を集めるのに、今は彼女の手を握って歩いているのだから、まるで見せ物のようだった。
特にこの男性と比べると、彼女の太くて低い体型が際立ってしまい、周りの人々は「この太った女、お金持ちの家の人なのかな?」というような目で見ていた。
夏川清美は侮辱されたように感じた!
「不機嫌?」結城陽祐は隣の夏川清美の不機嫌さを敏感に感じ取り、優しく尋ねた。
夏川清美は少し考えて、「あなたは居心地悪くないの?」と聞いた。
「なぜ居心地が悪いはずがある?」結城陽祐は不思議そうな顔をした。
夏川清美は時折二人に視線を向ける周囲の人々を見渡して、「そうじゃない?」と言った。
今はちょうど昼時で、病院で最も人通りの多い時間帯だった。彼らは一般通路を歩いており、人混みというほどではないものの、周りにはかなりの人がいた。
「ああ、自分の婚約者と手を繋いで歩くのに、なぜ居心地が悪いはずがある?」結城陽祐の声は大きくなかったが、気品があり、さらに国を傾けるほどの美貌を持っていたため、彼が話すと周りの人々は思わず息を止めた。そのため、彼の言葉は多くの人の耳に入った。
二人の関係を推測していた人々は目を見開いた。彼らは本当にカップルだったのか、この差は大きすぎる!
夏川清美はその質問に一瞬戸惑い、軽く笑った。突然、自分が劣等感を感じていたことに気付いた。
自分の体型と、隣にいる男性の優れた外見を比べて、無意識のうちに劣等感を感じていたのだ。
しかし結城陽祐のこの一言で気付かされた。夏川清美は軽く笑って、「そうね、自分の婚約者と手を繋いで歩くのに、なぜ居心地が悪いはずがあるわ。行きましょう」と言った。
「バカだな、それでこそ」結城陽祐は楽しそうに口角を上げた。
そのとき、誰かが突然声を上げた。「あれって正陽様とあの太った婚約者じゃない?『シンデレラにも春が来る』の主人公たちよ!」