林夏美は狂ってしまった。
弁護士の助言に従って狂ったふりをしたわけではない。
死んだのが高橋さんだと知り、林夏美が結城陽祐の側に無事に立っているのを目の当たりにした時、突然狂ってしまったのだ。
林夏美は林夏美がまだ生きていることを信じられなかった。
彼女は口で幽霊だと叫んだかと思えば、必死に暴れて林夏美に近づこうとし、笑ったり泣いたり、狂乱状態で法廷は全く正常に進行できなかった。
林夏美は冷ややかに彼女を見つめ、傍らの結城陽祐は彼女の手を握り、「怖がることはない」と言った。
「うん」と夏川清美は返事をした。
彼女は怖くなどなかった。ただ少し残念に思った。人が正気で罰を受けることこそが本当の罰なのに、今の林夏美は狂っているので、かえって彼女にとって都合が良いのだ。