藤堂さんは目を丸くして驚いた。先ほどは夏川清美をからかっただけだったのに、まさか本当に結城陽祐と何かあったとは!
「木村久美を返して」と夏川清美は恥ずかしそうに言った。
「ゆっくりね」藤堂さんは、木村久美を抱きかかえて歩き出す夏川清美を見て、後ろから声をかけた。
雲さんは状況が分からず、「清美ちゃんどうしたの?」と尋ねた。
「ははは、きっと木村久美に弟か妹ができるんでしょうね」と藤堂さんは楽しそうに笑った。
雲さんは一瞬驚いたが、すぐに理解して笑顔になった。「この二人がこんなに仲良くなるなんて、思いもしなかったわ」
「誰が想像できたでしょうね」藤堂さんも感慨深げに言った。最初は誰もこの二人を認めていなかった。天と地ほど違うと思われていたのに、結城陽祐が清美を大切にしているんだから。
雲さんは満足げに頷いた。
二人の仲が良ければ、彼女も安心して眠れる。
木村久美を抱いて先を歩く夏川清美は、二人の会話を聞いて、まだ熱い頬がさらに熱くなった。
なんで木村久美に弟や妹ができるなんて!
そう呟いたものの、先ほど書斎で陽祐との甘い時間を思い出し、頬がさらに熱くなる。木村久美の頬に自分の頬を寄せて、熱を冷まそうとした。
小さな木村久美はママが遊んでくれると思い、嬉しそうにくすくす笑う。夏川清美はそれを見て、左右の頬を交互に寄せると、木村久美は笑い続けた。
親子二人は飽きることなく遊び続けた。
部屋に戻ると、一日中ほとんど寝ていない木村久美はミルクを飲むとすぐに寝てしまった。夏川清美はようやく時間ができ、シャワーを浴びて運動を始めた。
雲さんは卓上ライトの下で老眼鏡をかけ、小さな靴を編んでいた。藤堂さんは休暇を取って夜は家族と過ごすため、今夜は二人きりだった。
夏川清美はヨガをしながら優しく声をかけた。「雲おばさん、編むのはやめた方がいいんじゃない?目に良くないし、子供はすぐ大きくなるから長く履けないし、もったいないわ」
「そんなことないわ。私が編んだものと買ったものじゃ違うでしょ。成長が早いなら、たくさん編めばいいじゃない」雲さんは不満そうに言ったが、靴を編む手は止めなかった。
夏川清美は笑って、「分かったわ。でも目には気をつけてね」