第396章 私を噛むなら、私も噛んでいい?

「はっはっは、いい考えだ!」

結城陽祐は怒って「出ていけ!」と叫んだ。お爺さんは笑いを抑えきれず、健二に向かって親指を立てた。

こんなに取り乱した孫を見たのは初めてで、気分は上々だった。

結城陽祐は自分の祖父を嫌そうに見て、屋敷の使用人たちはお爺さんほどの度胸はないものの、必死に笑いを堪えているのが分かった。床に散らばった目を覆いたくなるような本を見下ろすと、気分は更に悪くなった。

振り返って夏川清美を見ると、木村久美を抱きしめたぽっちゃりくんは相変わらず微笑んで彼を見ていた。結城陽祐は急に恥ずかしくなり、ぎこちなく身を翻して「書斎に戻る」と言った。

「お前の本を持っていけ」とお爺さんが結城陽祐の後ろから声をかけた。

結城陽祐は一瞬立ち止まり、突然足早に階段を上がっていった。

夏川清美は彼の少し狼狽えた後ろ姿を見て、思わず結城お爺さんと一緒に笑った。

お爺さんはそれを見て眉を上げ、「清美ちゃん、木村久美を山田くんに預けて、本を陽祐に届けてあげなさい。この子ったら、まだ照れているようだね」

「私...」

「早く行きなさい」夏川清美が何か言おうとすると、お爺さんはすぐに遮った。

夏川清美はお爺さんの意地悪な笑みを見て、仕方なく頭を振り、木村久美を藤堂さんに預け、四冊の本を拾い集めた。最後の「狼性社長」という本を見て、口角が引きつり、健二の発想力に感心した。

結城陽祐が書斎に着いて座ったばかりのところに、夏川清美が本を持って上がってきた。

夏川清美が自分について来たのを見て結城陽祐の気分は悪くなかったが、彼女の手にある本に目が留まると、すぐに顔を曇らせ「必要ないと言っただろう」

「そう?じゃあ私がもらおうかな、結構面白そうだし」夏川清美は本を抱えたまま立ち去ろうとした。

結城陽祐の表情が変わった。彼女が面白いと?この女は何をするつもりだ!

「置いていけ」

「え?要らないんじゃなかったの?」夏川清美は振り返って問い返した。

結城陽祐は「...健二が俺のために買ってくれたんだ。お前が欲しいなら、また彼に買ってもらえ」

夏川清美は一瞬驚き、考え深げに男を見つめた。健二が買ったからそんなに大切なの?

「そんなことを考えるな」結城陽祐は苛立った。

「じゃあ、置いていく?」夏川清美は前に進み、本を結城陽祐の机の上に置いた。